パワハラ被害が新たな加害を生むという皮肉―コンプラぼけした世の中へ

芸能人の不祥事が報じられるたび、瞬く間にメディアやSNSにより社会的制裁が下される昨今。国分太一を巡る一件も、例外ではなかった。情報統制と記者クラブ、メディアの在り方、そして世論による“断罪”。記者と当局、メディアとネット民の関係性を俯瞰しながら、「報じる責任」と「叩く正義」の境界を問う——。
沖田臥竜 2025.06.26
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 人気アイドルがいとも簡単に社会的抹消される世の中になった。国分太一くんの報道が世間を騒がせた先週20日。前日19日の段階で各メディアには翌日、国分くんのことで記者会見が開かれるというリリース表がマスコミに撒かれていた。

 このリリース表とは、◯月◯日◯時に各社、横並びで報道してくださいと、芸能事務所やテレビ局、それに配信会社や放映先からメディアに巻かれるFAX用紙のことだ。

 時間厳守と書かれた解禁時間を破り、先に報じてしまえば、次からそのメディアにだけは、リリース表が撒かれなくなってしまう。

 これは記者クラブに向けた警察発表も同様で、これをレク前に報じれば、当面の間、当局の怒りが収まるまで記者クラブを出禁にされることになる。

 記者クラブには週刊誌やネット媒体などのメディアはそもそも加入させてもらえず、テレビ局と新聞社のみとなる。

 基本的に記者クラブに所属しているメディアは、当局からの要請に従うのだが、それでも出禁覚悟で刺し込まなければならない時というのは必ずあって、最近で言えば、芸能人やスポーツ選手を巻き込んだオンラインカジノなんてそうだった。 

 ジャーナリズムとして速報を打ち込んだのは、毎日新聞だった。もちろん警視庁詰めの毎日新聞は記者クラブを出禁になることになったのだが、毎日新聞サイドの不運は続いた。それは、当局からの情報に一部事実誤認があったからだ。

 この件で、当局が吉本興業に対して訂正することになったと言われている。

 吉本興業と当局の関係は決して悪いものでなかった。吉本興業の芸人が当局の1日所長に協力する間柄でもあったのだ。その関係から当初、当局は吉本芸人のオンラインカジノ疑惑を公にする予定ではなかったのではないかと囁かれていた。

 だが、そうした動きを知ってしまった毎日新聞サイドが速報を流してしまい、一部、誤報とも取れる報じ方をしてしまったのだ。ただ誤報は頂けないが、それくらい攻めなければならないことも確かにある。

 話を国分くんい戻す。

 最初に私が耳にしたのは、国分くんを日テレサイドがもう庇いきれない状態だと言っているという話だった。

 実際、何があったのかという噂だってもちろん知っているし、あるメディアは、その件について、過去に何度か記事化が検討されていた。

 なぜ日テレサイドは、鉄壁な箝口令を敷いていたのが分かるだろうか。そして、それを自ら先に公表したのか。

 それはダンマリを決め込み、週刊誌に嗅ぎつけられたら、フジに続いて突き上げをくらうリスクがあったからだ。

 一昔前なら、週刊誌の報道で公になったとしても、最悪でも謹慎くらいで処理されていただろう。それくらいの力がジャニーズにあった。

 ただ、少しばかり、コンプライアンスを過剰に意識する風潮も問題ではないかと思うのは、私だけだろうか。

 堅苦しい時代になったものである。いつの間にか被害者となった側が、力を持ち過ぎてしまっている。

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