世の中には決して風化させてはならない未解決事件が存在する〜30年となる「スーパーナンペイ事件」〜

1995年、東京都八王子市で女子高生2人と女性従業員が射殺された「スーパーナンペイ事件」。未解決のまま30年が経った今も、警視庁は専従捜査員20人を投入し続けている。数々の容疑者、浮上と消滅する犯人像――。沖田臥竜が膨大な資料を紐解きつつ、複雑に絡み合う事件の核心に迫る。
沖田臥竜 2025.06.30
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大和田町スーパー事務所内けん銃使用強盗殺人事件(通称「スーパーナンペイ事件」)
95年7月31日、八王子市大和田町のスーパーナンペイでパート従業員の稲垣則子さん(47)、館高校2年、前田寛美さん(16)、桜美林高2年、矢吹恵さん(17)が射殺された。麻薬密輸罪で中国で死刑執行された元死刑囚の日本人の男が、2009年に警視庁の聴取に対して「カナダ在住の中国人の男が実行犯を知っているかもしれない」と証言したため、13年11月にカナダから移送。旅券法違反容疑で逮捕したが、有力情報を得られないまま同法違反で有罪判決を受けてカナダに戻った。公訴時効(2010年7月)直前の2010年4月に、殺人罪などによる公訴時効が撤廃され、現在も専従の捜査員約20人体制で捜査が続けられている。平成三大未解決事件のうちの一件。

事件が大きく動いた瞬間

 そのため、店内には子連れの主婦と店内の通路を行ったり来たりしている不審な男だけであった。子連れの主婦は買い物を済ませると間もなく、店を後にしている。

 残った男は買い物をする様子もなく、店内の通路を行ったり来たりを繰り返した後、食肉売り場と鮮魚売り場の間の通路を抜けて、店の出入口とは真逆の従業員専用の通用口から姿を消したのであった。

 その男の身長は、165センチから170センチくらい。事件直前の午後9時過ぎに、近くの路上で目撃されていた2人組の1人と着衣が酷似していたのであった。

 不審な男が姿を消した通用口は、店の西側にあり唯一、店外の駐車場へと直接出ることのできる通路だった。普段は従業員専用となっており、この日もアルバイト店員の人たちは、いつものようにこの通用口を通り、2階の事務所で帰宅準備をしていた。事件はそこで起きたのだ。

 これまでスーパーナンペイ事件が大きく動いた瞬間が3回ある。1度は2015年。現場に残っていた粘着テープの指紋を採取することに成功した時だった。各メディアもそれを受けて一斉に色めき立ち、すぐさまその模様を報じることとなった。

 被害者2人を縛りつけていた粘着テープはニチバン社製で、事件の約2ヶ月前から、東京、埼玉、千葉、神奈川、山梨のコンビニエンスストアなどで販売されていたばかりだった。

 事件発生当時から、粘着テープには指紋の一部が残っているのを発見できていたものの、当時の技術ではその指紋を検出することが出来なかった。

 それほど粘着テープに残された指紋の検出は困難であったのだ。

 それを警視庁が2010年以降に、特殊な液体や剥離剤を使うことで、粘着テープに残された指紋を検出することに成功させて見せたのである。

 そして指紋データベースと照合した結果、事件当時、多摩地区に住んでいた男の指紋とほぼ一致したのだ。だが指紋線というものは12点あり、全てが一致して、初めて同一人物とされている。

この男については、そのうちの8点しか一致しなかった。ただ残りの4点も一致しなかったのではない。不鮮明過ぎて確認しきれなかったのだ。

当時マスメディアでも報じられた通り、8点でも一致すれば相当高い可能性で特定されたと見てよいだろう。指紋照合の結果、該当した男は既に2005年ごろに病死していた男であった。

 ナンペイ事件を語る際、2つの説が唱えられる。

強盗説と怨恨説だ。だが警視庁一課特別捜査本部は早い段階で、怨恨説を潰しきり、強盗事件として捜査を絞っていたと言えるだろう。

その強盗説の中にも、世間の注目を集めた犯人像が大きく分けると3つ存在している。一つが指紋説となる。

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